小田 裕香子 | Yukako Oda
京都大学生命科学研究科 教授
Professor, Graduate School of Biostudies, Kyoto University
研究分担者:大谷 哲久 | Tetsuhisa Otani
東京都立大学理学研究科 准教授
Associate professor, Graduate School of Science, Tokyo Metropolitan University
上皮細胞間の接着は、多細胞生命システムの構築と自律性に重要な役割を果たしている。研究代表者の小田は最近、上皮細胞間接着を誘導する生体由来因子(新規ペプチドJIP)を同定することに成功し、これが細胞間接着に必須のタンパク質ZO-1を介して機能することを見いだした。一方で、研究分担者の大谷は最近、哺乳類細胞培養系において、ZO-1/ZO-2を欠失した細胞が正常細胞に近接すると細胞競合によって排除されることを見いだした。ショウジョウバエにおいては細胞間接着構成因子の変異が、ゼブラフィッシュにおいては細胞間接着分子の勾配の乱れが細胞競合を起こすことが見いだされており、細胞間接着の活性や状態が細胞競合の制御に重要であることが強く示唆されている。JIPは細胞間接着制御を介して損傷組織の修復に寄与するが、ショウジョウバエ上皮組織の修復に細胞競合制御分子が関与することも報告されている。以上の知見を踏まえ、本研究では培養細胞系および上皮傷害・感染モデルマウスを用いて、「細胞間接着の動態・制御を起点とした細胞競合の動作機序」と「傷害・炎症に応答した細胞競合の制御機構」を明らかにし、これにより細胞競合による多細胞生命システムの自律性の生成メカニズムの解明に迫る(図1)。
【小田】
【大谷】