川根 公樹 | Kohki Kawane
京都産業大学生命科学部 准教授
Associate professor, Faculty of Lifesciences, Kyoto Sangyo University
細胞脱落は、細胞社会のコンテクストにおいて発達した、細胞が細胞層(組織)から離脱して終焉を迎える細胞終焉様式であり、発生過程、発生後の種々の生理的局面や、癌原細胞の組織からの排除などでも観察される普遍的な細胞の振る舞いである。細胞脱落は「組織から細胞を除く」動的な変化であるが、同時に「組織を修復・維持し、恒常性を保つ」必要もあり、一見相反する要求を満たす精巧な機構で担われていると考えられるがその詳細は明らかではない。本研究は「組織から細胞を除くこと」と「組織を修復・維持し、恒常性を保つこと」を両立せしめている仕組みを明らかにする。これにより、組織の秩序を脅かしかねない細胞終焉がどのような機構で恒常性を維持しつつ実行され、この機構の破綻がいかなる影響を組織や個体の健康に及ぼすのかを理解することを目指す。具体的には、細胞脱落の実行における重要な過程として私達が見出した「脱落細胞における細胞外小胞の形成」と、解析を進めてきた「細胞接着の動態」に焦点を絞り、培養細胞、マウスオルガノイド、ショウジョウバエ及びマウスの腸管などの生体上皮の解析系を組み合わせて、これら二つの過程の機構と、細胞の離脱及び組織の恒常性の維持に果たす役割を解明する。