森本 充 | Mitsuru Morimoto
理化学研究所生命機能科学研究センター呼吸器形成研究チーム チームリーダー
Team leader, RIKEN Center for Biosystems and Dynamics
臓器の組織は、細胞が代謝や修復により自律的に入れ代わることで恒常性のある多細胞システムを保っている。その中心には幹細胞とそれを支えるニッチ細胞があり、特にニッチ細胞の供給する微小環境は幹細胞の自己複製と分化のバランスを制御し、多細胞システムに大きく影響する。微小環境の分子実体と、幹細胞が微小環境を奪い合う幹細胞競合を理解することが自律的な多細胞システムの理解に重要である。
我々はこれまでの研究で、呼吸器幹細胞の発生と再生の制御メカニズムを明らかにしてきた。最近、平常時に休止期にいる呼吸器の幹細胞が、損傷を受けると微小環境の変化によって増殖期に変化するメカニズムを明らかにし、微小環境の動的な変化の重要性を報告した。そして、幹細胞がニッチを奪い合う幹細胞競合が、臓器の自律的な多細胞システムにおいて重要な働きがあると考え、ニッチ細胞の実体と分子的な細胞間相互作用の解明を目指している。本研究で我々は、幹細胞と相互作用するニッチ細胞を網羅的にスクリーニングする系を新規開発し、特に呼吸器の幹細胞を支えるニッチ細胞を探索する。候補となるニッチ細胞はオルガノイド培養と遺伝子改変マウスを使い微小環境の実体となる分子を同定する。ニッチ細胞の解析を通して、未だ分からないことの多いニッチ細胞と幹細胞競合の関係を明らかにする。