鈴木 淳史 | Atsushi Suzuki
九州大学生体防御医学研究所器官発生再生学分野 教授
Professor, Division of Organogenesis and Regeneration, Medical Institute of Bioregulation, Kyushu University
各組織を構成する細胞は多様性に富んでいるが、最近では各組織の幹細胞にも多様性が存在することが明らかになってきた。肝臓は、その発生・再生過程や病気の進行において、幹細胞の性質を有する細胞が重要な役割を有すると考えられている。我々は、これまでの研究でマウス胎仔肝臓や成体マウス肝臓に存在する肝幹細胞を高度に濃縮し、それらの特性を解明することに成功した。濃縮された肝幹細胞集団は一見すると均一な細胞集団に見えるが、その「幹細胞性」は一律ではなく、多様性の存在が示唆される。そこで本研究では、肝臓から分離した肝幹細胞の1細胞RNAシークエンス(scRNA-seq)解析を行うことで多様性の実態を解明し、さらに細胞系譜追跡実験(リネージトレーシング)によって肝幹細胞が競合的コミュニケーションを介してどのように肝臓の組織形成に寄与するのかを明らかにする。