佐野 浩子 | Hiroko Sano
久留米大学分子生命科学研究所 講師
Lecturer, Institute of Life Science, Kurume University
細胞競合は細胞集団を均質化することにより組織の構造や機能を最適化する多細胞生命の自律性維持機構である。主にがん細胞の排除をモデルとして細胞競合を制御する遺伝的プログラムの理解が進んだ一方、環境要因の影響についての知見は限られている。生体内環境、とりわけ栄養状態は個体の置かれた状況や疾患により大きく変動するため、栄養状態が細胞競合に及ぼす影響を理解することは生命の自律性や疾患発症メカニズムの解明に重要であると考えられる。しかし、栄養感知についての知見が十分でないことが栄養と細胞競合の関連を解析する妨げになっていた。我々は最近、ショウジョウバエおよびマウスにおいてポリオール経路と呼ばれる代謝経路がグルコース感知に重要であることを明らかにした。そこで本研究では、ポリオール経路の関与を中心に、がんおよび正常組織の細胞競合における糖感知の役割を明らかにする(図1)。