小川 基行 | Motoyuki Ogawa
順天堂大学薬学部 助教 / 東京大学大学院薬学系研究科薬学部研究員 / 東京医科歯科大学高等研究院 連携研究員
Assistant Professor, Laboratory of Bioresponse Signaling, Faculty of Pharmacy, Juntendo University
上皮組織は、がん変異細胞や不良細胞などを正常組織から選択的に排除する細胞競合を介して自身の構造・機能を最適化する。この分子機構の解明は、上皮組織の自律的な恒常性維持機構の理解に繋がるとともに、細胞間相互作用を標的とした新規治療薬の開発に繋がる課題である。しかしその分子基盤の全貌は特に哺乳類において未解明な点が多く残されている。我々は最近、哺乳類細胞を用いたイメージング解析により、がん変異細胞から分泌される液性因子FGF21が物理的な力を惹起して細胞競合を誘導することを発見し、液性因子による新たな細胞競合機構を提唱した。また、本領域の公募研究第一期において、正常マウスに簡便かつ迅速に細胞競合を誘導可能な新たなin vivo細胞競合解析系を構築し、FGF21が生体内で細胞競合を誘導することを実証した。さらに、細胞競合制御因子を網羅的に同定するゲノムワイドsiRNAスクリーニングに向けて、新たな哺乳類細胞競合モデルの樹立及び細胞競合を客観的かつ定量的に評価可能な新たな検出系を構築した。本研究では、これらの知見・技術を活用して、独自に発見したFGF21による細胞競合機構のさらなる解析を進めるとともに、スクリーニングによる網羅的な解析により、細胞競合の分子基盤の全容解明を目指す(図1)。