木村 健二 | Kenji Kimura
北海道大学遺伝子病制御研究所 講師
Lecturer, Institute of Genetic Medicine, Hokkaido University
哺乳類をはじめとした多くの動物種における配偶子形成では、均一な生殖細胞の集団から一部のみが生き残るという生存競争がみられる。生殖細胞の集団は、初期は互いの細胞間橋を介して細胞質を共有した合胞体となっており、やがて大半の細胞質は一部の生殖細胞へと流れ込む。受容側細胞は卵母細胞へと成長し、供与側細胞は縮小して細胞死で排除される。この生殖細胞間で細胞質を奪い合う細胞質の競合的獲得を介した生死の運命決定には未だ不明な点が多い。本研究では、配偶子形成を継時観察できる線虫の利点を活かし、遺伝学的には同一な生殖細胞間で細胞質の獲得能力に差が生じるしくみを解明することで、成長する細胞と排除される細胞の生存競争バランスを決めるシステムを解明する。この細胞質の奪い合いを介した競合的コミュニケーションの解明によって、細胞集団の運命選別機構の理解を加速し、細胞競合分野の新機軸開拓に挑む。