石谷 太 | Tohru Ishitani
大阪大学微生物病研究所 教授
Professor, Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University
モルフォゲン勾配は、組織を構成する各細胞に連続した位置情報を与え、場に適合した運命を誘導する多細胞生命システムである。我々は最近、ゼブラフィッシュイメージング解析により、正常な胚発生過程においてモルフォゲン勾配を乱す異常細胞が頻繁に自然発生することと、勾配を乱す異常細胞が細胞競合によって排除され、勾配が自律的に修復されることを見いだした。すなわち、細胞競合がモルフォゲン勾配システムの自律性を支えることを発見した。そこで本研究では、細胞競合がモルフォゲン勾配システムに自律性をもたらす物理化学的基盤を解明する。ゼブラフィッシュ解析に加え、計画班員と連携した空間オミクス、合成生物学によるin vitro再構成、力学的解析を実施することで包括的かつ定量的に理解する。また、異なるモデル動物を用いる計画班員と連携して種を超えて機能する細胞競合マーカー分子を同定し、細胞競合の時空間動態と機能を探索することで、細胞競合が生み出す多細胞生命システムの自律性の生物学的重要性の理解を目指す(図1)。